「うつからの完全脱出」を読んで

下園壮太「うつからの完全脱出」という本を友人からのおすすめをされて読んだ。

 

うつからの完全脱出 9つの関門を突破せよ! (こころライブラリー)

うつからの完全脱出 9つの関門を突破せよ! (こころライブラリー)

 

 この本には、うつ病からの回復にあたって9つの関門があるとしている。

それぞれ、以下のようになる。

 

①休むという決心をする ~ 自分の弱さを知る

②医療への不信感を乗り越える ~ 人を信頼する不安との戦い

③家族や職場の理解を得る ~ 自分の中に潜む周囲への甘えとの戦い

④無意識の恐怖との戦い ~ ”休む”という新たな行動を実行する

⑤復職への恐怖との戦い ~ 勇気を出して自分の状態を打ち明ける

⑥知覚できない疲労との戦い ~ 客観的なデータで休養をとる

⑦早く治りたいという焦りとの戦い ~ うつの波を実感する

⑧リハビリ中期の大きな落ち込み ~ 悩みと直面し、受け入れる

⑨リハビリ後期の自殺衝動の嵐 ~ 死にたい気持ちを上手にやり過ごす

 

関門というのは、うつ病の困難さについて時系列で並べて述べているものである。

まず、著書はうつ病の本質は「疲労」であるとしている。

疲労なので、休むことがなによりも重要である。しかし、うつ病の人にとっては休むことが難しい。

 

①では、診断を受けて最初に休むまでの難しさについて述べている。「休まない自分」「頑張る自分」という自己イメージを捨てて、休息に入ることを書いている。

②では、うつ病の治療は長期にわたるものなのだが、患者はすぐに治る「魔法の特効薬」を期待してしまいがちである。そのため、医療への不安を感じやすい。大切なのは効く薬をみつけるために、効果や副作用について伝えること。わからないことがあれば質問することとしている。

③では、うつ病の支援で必要な他者(家族や職場)の支援を得るために、自分の状況について理解をしてもらうことの重要性を説いている。「わかってくれる」という甘えは持たないことだ。

④では、本格的に休息に入ったときの休み方について。「しがみつき」というそれまでのストレス解消方法にたよってしまう危険性。アルコールやギャンブルといった行動はうつ病にはマイナスに働く。

⑤復職後の職場でどう見られるか不安で、自分の病気のことについて伝えることの必要性。第三者(カウンセラー)などを通してでも現状について理解をしてもらう。

うつ病疲労を感じにくい。数値化したり、疲労感に代わる事象(肩がこる、階段を登りたくないなど)を捉えることにより、疲労をためすぎないこと。

うつ病の状態は波がある。記録を続けることで、自分の悪い時期がどれぐらいの長さであるのかを把握し、焦らないこと。

⑧リハビリ期間の停滞時期。生きる意味や過去のトラウマにさいなまれる場合がある。また、相性の悪い出来事(転職や離婚)を避ける。

⑨自殺願望についての対処。一人で悩まないこと、悩む時期を延期させる(抱える)こと、元気になったからといって無理しないことなど。

 

全体を通して、

・休むことの重要さ

・周囲の理解を得ること

・自分について理解すること(記録)

を繰り返し述べている。

 

これまでの自分を振り返るとどうだろう。

休むことはまあまあできているのではないか。というか、この合計で1年近く休職をしているわけで、もう休み疲れた(?)というレベルですらある。

しかし、平日の夜や土日、いろいろな予定を入れたくなる誘惑もあるだろう。それはこらえて、休息して体力を蓄えることが重要だ。

 

周囲の理解を得ることはほとんどできていなかったなと思う。

うつ病というのは、周囲にはほとんど理解できない。というより本人もよくわからないものだ。しかし、実社会でリハビリしていくためには協力者を得る必要がある。

うつ病の人は対人恐怖感を持ちがちだが、うつ病そのもの、また自分のいまの状況を適切に周囲に伝える努力が必要だとしている。

自分は、なかなかこの現状を伝えるというのがうまくできていなかったように思う。どうせ周りは理解してくれないだろうという思いと、わかってほしい・勉強してほしいという甘えの矛盾する感覚の中で、自分のことを伝えることを怠ってしまう。それが生きづらさの原因となるのだ。

一度目の復職の際には、最初に配属されたチームの上長には体調についてカウンセラーなどとも交え伝えるようにしていた。しかし、2つ目以降のチームではそれを怠っていた(注意されるまで放置)。それが居づらくなった理由であろう。チームを短期で変わっていくようになってしまったのは運が良くないが、その度に説明を怠らないことが必要だろう。

 

自分について理解すること。これは、体調やメンタルの波について記録し、不調のときに備えること。回復の過程では波があるものだ。

 

また、自殺願望について。

リハビリの後半で、周囲は「もう治っただろう」という認識と本人の感覚のズレが危険だと書いている。これは、まさに自分のことだなと思った。

自分としては、「いつまでもグズグズしてはいられない」「休職の期限があること」「よくなったと見られないと見放される」などの理由で、自分の不安な状況などを伝えづらい。「毎日、図書館通いができている」「毎朝、決まった時間に起きれている」などよいところだけを伝えるようにしてしまいがちだ。

しかし、自分としては「気持ちがすっきりしない」「頭が重い」などの症状はいまでもつきまとっていることに不安を持っている。

このギャップにより、孤立が深まり、これに突発的な心身の不調が重なると自殺のリスクがグンと高まる。

 

自分は、つい最近経験したが、自殺願望あるいは自殺未遂というのは非常に苦しいものである。それまで自殺する人というのは、あるとき思い立ってポンと逝ってしまうものだと他人事で思っていたが、実際には死ぬか死なないかで非常に葛藤がある。

この苦しさはもうなるべく経験したくない。実際に至っていないが、これは死より苦しい。

 

なるべく人に相談することも大事であるが、「その悩みはいますぐ解決しないとだめなのか?」と自分に問うこともこの本に書いてあるとおり重要だと思う。

悩みというのはすぐに解決されるものでもないし、時間が経てば苦しみは消えることもある。それを抱えた状態で待つ姿勢も必要である。